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福岡高等裁判所 平成5年(ラ)41号 決定

主文

一  原決定を取り消す。

二  本件免責を許可しない。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書記載のとおりである。

二  一件記録によれば、相手方は、平成四年六月ころ、乙山株式会社に勤務し月収二〇万七〇〇〇円(手取りは、同年五月で一五万六五四八円、六月で一三万五二九八円)を得ていたが、同年七月一日、抗告人に対し、当時すでに二四社から七四〇万円を借り受け、毎月の返済額が三〇万円以上となつていたのに「他社借入、三社、一〇〇万円、毎月返済額四万五〇〇〇円」と虚偽の事実を申告して二〇万円を借り受けたこと、相手方は、まもなく支払い不能と判断し、同月二三日大分地方裁判所に本件破産の申立てを行い、同年九月一七日その宣告を受けたこと、相手方は、ボーナスで支払う予定でいたところ、会社の業績悪化のためボーナスが出なくなつたので破産申立てを決意したと述べているが、本件借受時において、すでに支払い不能の状態にあつたことが認められ、右の事実に照らせば、相手方は、すでに支払い不能の状態となつていることが分かつていながら許術を用いて抗告人より金員を借用したものと言うべきであつて、破産法三六六条の九第二号に該当する事由がある。

そして、右相手方の用いた許術の態様が作為的な欺罔行為であつて、本件借入と本件破産の申立てがきわめて近接していること等を考慮すると、到底軽微なものとはいえず、相手方を裁量によつて免責するのも相当でないと言うべきである。

三  よつて、これと異なる原決定は失当であるからこれを取り消し、本件免責を許可しないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 柴田和夫 裁判官 足立昭二 裁判官 有吉一郎)

《当事者》

抗告人 株式会社ワールド

右代表者代表取締役 国本光徳

相手方(免責申立人) 甲野太郎

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